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4.安堵と焦燥


『今』ではない、別のどこかに行こうとする時、あなたの心は迷子になります。

その瞬間から、「安心を忘れた状態」、つまり不安げな状態に成ることが出来ます。

どこからともなく、焦りの感覚が湧きあがって来る時、あなたは「このままではいけない」と思うかも知れません。「何かしなければ‥」「今のままではまずいかも‥」という焦燥感の到来です。

そんな時、そのような焦燥感を、少しでも慰めてくれるのが、あなたに向けられる“他人の反応”です。

自分以外の誰かに評価された時、受け入れられた時、役に立てたと感じる時・・、あなたの焦燥感は少しばかり安堵します。

しかし、しばらくすると、またどこからか焦燥感がやってきて、あなたの胸にそっと忍び込んでささやきます。

「あなたは何をやっているの?」と。

焦燥感は、常に「自分が何をやっている人か?」について、問いかけて来ます。

そして、別に何もやっていない、大したことなどしていない、大したモノなど持っていない自分を見つけると、焦燥感はここが自分の居場所とばかりに、あなたの一挙手一投足にピッタリとくっついて回ることでしょう。

そんな時あなたは、何かをやろうとし、時間を埋めようとし、どこかへ行こうとするかも知れません。

そして「何かをした」という実体を、証明として残そうとし、安堵を呼び戻そうとするかも知れません。

幸いにも、そんな記録・証明媒体は、あなたの強い『実感』が欠けているところを上手に補足し、形作ってくれます。

それであっても、安堵はいつだって自分の内側に骨をうずめてくれることはなく、またいつの間にか去っていきます。なんとも、つかみどころがない存在です。

どうしてでしょうか?

はっきり言って、安堵は「あなたが何をしている人か?」について、まったく興味がありません。あなたのすることを見守りはするものの、その事に対して、評価を下すことはありません。

安堵は、あなたという『存在』が、「あなたが何をしている人か?」によって左右されるものではないことを、知っているからです。

それは本来、あなたの『存在』にピッタリとくっついて、離れることなどあり得ません。あなたの心がどこかに行ってしまった時、安堵はそこにじっと留まり、あなたの心の帰りを、ただ待っています。

あなたの心が、『今ここ』にいる時、安堵はいつも、あなたと一体なのです。

とは言え、あなたは『今ここ』という意味が、本当にお分かりでしょうか?

『あなたの今』―‥とは、

あなたが今立っている、そこのところ‥

あなたが今座っている、そこのところ‥

の事ではありません。

あなたが今、置かれている立場、

あなたが今、所属している会社、

あなたが今、目にしている景色・・

・・の事ではありません。

『あなたの今』とは、『あなたの心の実感』のことです。

あなたが、ふと誰かから何かの言葉を言われたとしましょう。

するとあなたは、『それについて、自分の心が何を感じたか?』を実感するより早く、「相手になんと言葉を返そうか?」と反射的に考え始めるのではないですか?

こうなると、あなたの『今』は、そこで抜け落ちてしまいます。

あなたに何かが起こった時、『それで心が何を感じたのか?』を実感するより先に、「それをどうするか?」「それについて何をするのか?しないのか?」について意識が忙しくなってしまうことはありませんか?

そんな時、あなたは『今』を置き去りにして、どこかに飛んで行ってしまうことになります。

どうか、あなたの『今に対する実感』と共にいてください。

その実感覚こそが、あなたを『今』という大船に乗せたまま、『次なるあなたの今』へと、“あなた全体”を欠かすことなく悠々と運んでくれます。

けれども、ここでひとつ湧き上がって来るのは、「今を感じて過ごすってことは、過去のことは考えない方がいいの?」という疑問かも知れません。

あなたが過去の事を思っている時、必ずしも今を生きていないわけではありません。

あなたが、かつて過去に置き去りにした“実感”を『今ここ』ですくい上げ、発見し、感じる事が出来た時、あなたはその時、過去というチャンネルの『今』を強く生きることになるでしょう。

この点が“惰性で過去を回想すること”と“意図的に過去に命を吹き込むこと”の違いです。

あなた自身が、あなたの持つチャンネルに『実感覚』という命を吹き込んだ瞬間、そこには『力』が発生し、必要な“学び”と“癒し”をもたらします。

なぜなら、それは『あなたの今』 になるからです。

あなたは『あなたの今』に対して、常に主導権を持っています。

ですから、『あなたの今』を実感していてください。

それは、『あなたの力』そのものです。

あなたがちょっと、不安な時、ソワソワする時、やきもきする時、落ち着かない時‥、あなたの『力』である“実感”を、『今ここ』に呼び戻してみてください。

それでも、やっぱり「どのように“今”を感じていいか分からない‥」というのであれば、どうぞ『今この瞬間』の自分の呼吸を感じてみてください。

ひと呼吸・ひと呼吸を、ゆっくりと、しっかりと、味わってみてください。

あなたが息を止めようともがいてみても、呼吸を拒否して口をつぐもうとも、しばらくするとそれは勝手に、あなたの中に入って来ます。

食事の仕方を知らない赤子に対して、お母さんがスプーンでそっと口に運んでくれるように‥やさしく、さりげなく・・

これが『無償の愛』であることを、ご存じでしたか?

それは、ただの一度も、あなたを見放したりなど、裏切ったりなど、したことがありません。

あなたがどんなに厳しい状況に置かれようとも、たった一人で孤独に苛まれようとも、あなたにはいつもこの『無償の愛』が注がれていたのを、ご存じでしたか?

その証拠に、あなたは今も、ここにこうして生きています。

今この瞬間も、生き続けております。

あなたの安堵は、あなたの内側を途切れることなく流れ続けていることを、いつでも思い出していてください。

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