ファッションにおけるポストハーベスト
- Bio Sinfonia
- 2015年1月23日
- 読了時間: 5分
更新日:1月16日

コートやセーターが活躍する季節になると、店頭の目立つところに「防虫剤」が並ぶようになります。
防虫剤は、私たちの身近にある家庭用農薬の一つです。
「衣類の防虫剤を使う」
ということは、つまり【自分の体じゅうに農薬をまとう】ことを意味します。
それは、
寝ている時も、
働いている時も、
歩いている時も、
お食事中でも・・・
朝から晩まで、空気と一緒に農薬を吸い込むライフスタイルを選ぶということです。
もしも、オーガニック食材にこだわりながらも、クローゼットに防虫剤を入れていたなら、支離滅裂な生き方ということになりますね。
疲れやすくなったり、さえない顔色になったり、理由の分からない不調に見舞われたりすることもあるかも知れません。
防虫剤は、たった一回使っただけでも、服の繊維にしっかりと成分が絡みつくので、お洗濯を繰り返しても、ぜんぜん落ちなくなるほどの威力を持っています。(※1)
そして、衣類に染みつくだけでなく「クローゼットそのもの」にも成分があっという間に沈着してしまうので、後から入れる服も、どんどん自動的に農薬づけになってしまうというわけです。
そして、そんな服を着て生活するだけで、自分だけでなく、周囲のみなさんにも農薬を振りまく結果となってしまいます。
そもそも、こうした薬剤が生まれたケミカル産業の歴史を辿れば、戦争の化学兵器の研究と、切っても切れない関係であることが分かります。
「“わたしのモノ”を脅かす恐れのある存在は、念のため、先に殺しておく」
戦争における技術を、現代ビジネスに転用した分野が「家庭用農薬」であり、そのひとつが「防虫剤」です。
これらの技術は、防虫剤だけでなく、殺虫剤、除草剤、虫よけ・・網戸にはるだけ・吊るすだけ・・・と、私たちの身近にある様々な「家庭用農薬」へと派生していきました。

確かに、大切なお洋服に穴があいたなら、虫さんに敵意が湧いてしまうのも、もっともなのかも知れません。
けれども、虫さんが食べるのにも、それなりの理由があります。
■その引き出しは、どれくらい開けていませんでしたか?
■その服は、どれくらい袖を通していませんでしたか?
■ 「サっと着たくらいだし…」と、洗わずにしまい込んだりしませんでしたか?
わずかな皮脂汚れや、小さな食べこぼしでも、虫さんにとってはご馳走になってしまうことがあります。
どの服も、しまいっぱなしにせず、袖を通し、風を通し、光にあてて可愛がってあげるだけで、それだけで自分にも社会にも、危険な化学物質をふりまく必要がなくなるのです。
なんといっても、大切な服を「ただ着る」だけで手入れになるのです。
ときどき袖を通しては、普通に洗濯するだけで、現代のしっかりとした住環境(※2)ならば、防虫剤は必要ありません。
しかも、近年では、私たち現代人が着る衣類の多くが化学繊維で作られるようになっており、通常なら虫たちが食べたがらない材料に変わってきているのです。
ですから、「ただ着る・洗う」という行為だけで、十分なほどの状況になっているのです。
けれども、こうした基本的なことさえやる余裕がないとしたら・・
■心も体も疲れすぎているか、
■必要以上に多くのモノを持ちすぎているか、
しかるべき理由があるのかも知れません。
そもそも、人が「衣類に農薬をつけて保存する」という事態になってしまったのは、モノがあふれすぎているからでもあります。
一時の流行で買ってみたものの、ほとんど着ないで飽きてしまった服や、この先着るのかどうかさえも分からない服が、タンスの中にどれほど眠っているでしょうか?

流行というのは、当然のことながら色あせます。
色あせると、興味を失い、別に「見よう」とも思わなくなります。
それでもどうか、自分の選んだ服を、薬品まかせにせず、自分自身で見てあげてください。
そうやって「目」という光を当てているうちに、自分の選んだものが、一体どんなものだったのか?が分かってきます。
観察し、発見し、学ぶ機会を重ねていくと、そんなあなたの『人間性』が、やがてあなたのファッションへと反映されていきます。
それが、流行とは別のところにある「あなたらしさ」をつくっていきます。
移り変わる流行を楽しむ気持ちも肯定し、一枚の同じ服を長く着続けることを慈しみ、 穴があいた時はすこしばかり手をかけて「新しいデザイン」や「別の用途」という選択肢も考えてみる・・・

そのような全てを楽しめる時、あなたのファッションは、「あなたの人間性の延長」となり、うわべではなく、イヤミでもない、なんとも言えない素敵なバランスで、そこにあなたが表現されます。
地球の素材を、恩恵として身にまとっている私たち。
自分の細胞も、地球の細胞も、農薬づけにするのをやめて、豊かなファッションの醍醐味に出会ってみてはいかがでしょうか。
今日も長文をお読みくださり、心より感謝いたします。
ありがとうございました!
2015年1月24日 --Bio Sinfonia---
(※1)・・化学物質過敏症の方は、10年前・20年前にちょっと使った防虫剤にも大変苦しい思いをします。もし同居しているご家族に化学物質過敏症の方がいらっしゃる場合は、衣類だけでなくクローゼットごと処分する必要があります。また、化学物質過敏症のお友達に会う際には、防虫剤を1度でも使ったことがある衣類は着用してはいません。洗い続けて、表面的には臭いが落ちたように思えても、衣類の表面積というのは莫大で、密になっている繊維群が成分を保持し、わずかでも放っているからです。
(※2)・・きちんと掃除やお洗濯、袖通しをしているのにも関わらず、それでも虫に食われるのだとしたら「部屋全体」や「家自体」に、根本的な問題がある可能性が高いと思われます。家具はもちろん、壁・床・天井など、建物そのものに潜む問題を見ていく必要があります。