命をあたためるもの ― 美しい老廃物の、あたたかな循環
- Bio Sinfonia
- 2024年3月21日
- 読了時間: 5分
更新日:1月26日

春が来ています。
急に暖かくなったと思ったら、また寒さが戻ってきたり。
気温のアップダウンが目まぐるしい季節ですが、みなさんお変わりありませんか?
屋根と壁に守られた暮らしをしている私たちでさえ、気温の変化はこたえるものですが、冷たい風が吹く大自然の中で、体ひとつで生きている鳥たちの逞しさには、いつも感嘆させられます。

鳥たちは、寒い時はよく自分の羽根をふわっと膨らませて、空気を体いっぱいに取り込むことで、その日その日で、自前の羽毛布団の厚みを調節しているようです。
そんな鳥たちですが、春も本番になってくると「体を温める」ための特別なアイテムを集め始めます。
しかも、「体を温める」と言っても、自分の体を温めるものではありません。
春は、子どもたちが生まれてくる季節。なので、この時期だけは、かわいい子どもたちの体を温めるための特別なものを、親鳥は懸命に集めるようになります。
まず、スタンダードな毛布として人気なのは、やはり「苔」ですよね。ふわふわしていて、いいにおいがして、厚めであたたかい!
そのほかには、さまざまな木の皮や植物の繊維も人気です。それらを重ねたものは、巣の外側の骨格としても最適です。

(風が吹いた日、空からふわっと落ちてきた使用済みの鳥の家)
しかし、それらとは異なり、この辺の森で非常に人気なレア・アイテムとなっているのが、なんとこちら。
寝心地、あたたかさ、ともに5つ星をご提供する・・・

わが家の愛犬、Moon(ムーン)の抜け毛です。
通称、「ムチャ毛」と呼ばれています。
寝心地、あたたかさ、ともに5つ星をご提供します。

犬のケモノ臭が、他の生き物たちからヒナを守るための防御力も兼ねているのかどうか?までは分かりませんが、このふわふわの毛布を求めに来る小鳥たちの多さから、その厚い信頼度がうかがえます。
庭に置かれたムチャ毛は、こんな感じ。

(通常は、もっとほぐした状態で置きます)
春も本番になってくると、さまざまなタイプの鳥さんが、ムーンの抜け毛を求めてお庭に集まってきます。

毛を集める時は、たいていメス鳥が近くで周囲の安全確認をしながら見守っていて、オス鳥の方が毛をくちばしいっぱいにくわえながら集め、集め終わったらふたりで巣に帰っていきます。

何度見ても、時が止まるかのような素敵な瞬間。
さまざまな悩みも、すごくちっぽけに思えてくるくらい、自然界の営みの本質に触れる瞬間は、心が洗われる瞬間でもあります。

小鳥さんたちが、Moonの抜け毛を集めていることを知ったのは、今から8年ほど前のことです。
以前住んでいた山奥でも、ムーンの抜け毛を庭に捨てて土に返していたのですが、ある日ふと窓の外を見ると、可愛い小鳥のご夫婦が、ムーンの抜け毛をせっせと集めているではありませんか。
口いっぱいにくわえて持ち帰っては、また再びやってきて、毛がすっかりなくなるまでそれを繰り返すのです。

(かつての住まいに来ていた小鳥さん)
毛がない日は、「うーん、ないなぁ」と土の表面を見ながらその辺をブラブラして、残念そうにしています。
まるで、「アレの在庫はないんですかぃ?」とアピールしているかのようなそぶりです。
あわてて床の掃除をしたり、ムーちゃんをなでてあげて急遽得られた毛を集めて外に出すと、すぐに鳥さんが飛んできて毛を持ち去っていきます。まるで今か今かと入荷するのを心待ちにしていたかのような様子です。
こんな感じで、毎春を過ごしていました。
今は、当時の山奥からは引っ越して、また別の山奥に住むようになりましたが、この習慣は続いています。春になると、ムチャ毛をお庭に出して、鳥たちが欲しければ持っていけるように、草むらの中に置いておきます。
種類の違う数組の鳥たちがやってくるので、ムチャ毛の在庫はあっという間になくなってしまいます。
なので今では、なるべく在庫切れにならないよう、冬の間にムーちゃんをなでて出てきた毛を箱に入れて大切にとっておき(変態ですかね?笑)、春になるとお庭に出すようにしています。

ムチャ毛の在庫が少なくなってくると、鳥たちの面持ちが「あんまりないなぁ」と残念がっているような雰囲気になるので、かなり貴重なものなんだろうと推測できます。

あたためる材料が少ないと、親鳥は自分の毛を抜いてまで、子どもたちを温めるために使ったりするそうです。
鳥たちにとっても、春の最中にやってくる「寒の戻り」は厳しいものですからね。
でも、ムチャ毛がこうして小鳥たちの毛布になることができるのも、わが家では柔軟剤も除菌剤も抗菌剤も使っていないし、ムーンに対してもペット用薬剤を使用していないからこそです。鳥たちも、少しでも何か嫌な薬品を感知したら、こんな風には来ることもないのでしょうね。
肝心のムーンは、一年一年、確実に老犬になってきており、新陳代謝も若い頃より衰えてきたらしく、抜け毛の量も昔よりは減ってきました。
今年はいよいよ、15歳を迎えます。
何とかまだまだ、ずっとまだまだ、元気で長生きして欲しい気持ちでいっぱいです!
Moonちゃん、君はこの森の鳥さんたちにとっても、大切な存在だよ。

私の翻訳活動である「Moonのにほん語」という名前は、ムーンの話す犬語にあまりにも気持ちがこもっていて、まるで日本語を話しているみたい!と感嘆させられることが多かったことから、異なる言語を翻訳する際にも、そこにある真意・真実・真心が伝わるような翻訳ができるようにと、そう名付けたのでした。
「Moonのにほん語」は、これからも成長していきます。これから先、また素敵なご報告や、動画のアップ、記事の更新等を続けていくので、どうぞ末永く見守ってやってくださいませ。
どうかあなたの春も、心が洗われる素敵な春になりますように。
お読みいただきありがとうございました!
Bio Sinfonia

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あなたもぜひ、これで心を温めてみてください!